奥美濃 黒津山
 〜 下手な説明は無用、山日和氏の簡明かつ思い入れのあるレポート と小生
    のヘボ画像で奥美濃の雪稜を垣間見て頂きましょう では、天上の楽園へ 〜


【奥美濃】美濃攻め総決算の黒津山

 黒津山。蕎麦粒山から五蛇池山を経て天狗山に至る山稜に聳える、地図に名前の無い山である。しかし、その1193.5mのピークは湧谷山方面から眺めると実に堂々とした姿で目に飛び込んでくる。いつかあの山頂に立ちたいと思い立ってから四年余、バリハイスト3人の同行を得て、念願を果たすことができた。

【日 時】2002年2月24日(日) 【山 域】奥美濃 岐阜県坂内村、藤橋村境
【天 候】快晴 【メンバー】緑水氏、SHIGEKI氏、Qちゃん、山日和
【コースタイム】坂内村役場7:25--7:54広瀬城址8:02--9:28 Ca910ピーク9:40--
10:06 P970--11:00アラクラ(P1163)--11:29黒津山13:13--16:00村役場

 黒津山を目指すに当たって、どのルートを取るかいろいろ考えた。 「美濃の山」で紹介されているコースは大谷川林道を終点まで進んでから、蕎麦粒山の取付き点から反対斜面を急登するものだがあまり面白くなさそうだ。坂内村役場から北に延びるたおやかな尾根に注目した。雪さえあれば痛快な雪稜歩きが楽しめるに違いない。(もし違ったらどう言い訳しよう・・・)そう確信して、この長閑な尾根を登路に選んだ。 

 前夜横山ダムサイトで車中泊、6時に目が覚めた。集合時間は7時、道の駅藤橋だ。 少し早いが朝飯の支度もあるしと6時15分に道の駅に着くと見覚えのある赤い車が。 緑水さんがすでに到着していた。5分ほどしてQちゃんも到着。SHIGEKIさんに電話を入れるともうすぐとの事。みんな遊びの時間にはシビアだ。
 クルマ4台を連ねて坂内村役場へ向かう。先々週の雪道がウソのよう、まったくの ドライ路面だ。緑水さんが、止まっていたバスの運転手となにやら話し込んでいる間に取り付き点を偵察した。なになに、「→広瀬城址」。おあつらえ向きに遊歩道が付いている。これはラッキー 、雪が出るまでのヤブが問題かもしれないと思っていたが、世の中うまくできているものだ。

 広瀬城址の広場は城が本当にあったとは思えない狭さ。.  真中に何のつもりか子供が工作で作ったようなおもちゃみ たいな城が鎮座していた。「これが広瀬城かー。」城址を過 ぎてもよく踏まれた道が続いていた。南向きの日当たりの いい尾根道の雪は平坦地では残り、急斜面では消えと、  断続的に現われる。  

 600m付近のコバでワカン装着。(今日はワカンなのだ。)   ここまでツボ足ではけっこう潜っていたが、ワカンを履くとまったく快適。雪面にツメの痕しか残らない予期せぬいい雪質だ。ある程度ラッセルを覚悟していたが、その心配はなさそうである。高度を上げるに連れ、背後に雄大な展望が広がり始めた。金糞やブンゲン、貝月といった奥美濃南部の山々。白い衣装をまとった山並みに感嘆の声が飛び交う。あまりのいい天気にみんな日焼け止めを塗りたくっている。  
 


 尾根の幅が狭まり、疎林の中を一直線に雪稜が延びる。これは期待以上の稜線だ。自分思い描いていた光景が想像通り現実となった満足感に酔いしれる。雪の奥美濃初体験のSHIGEKIさんは「よろしいな〜」の連発。全員思い思いに写真撮影しながらもけっこういいペースで進む。右手には先々週の天狗山が大きく横たわるが、こちら側は植林主体のためいまいち迫力不足。


 行く手に目をやると、アラクラの右に黒津山本峰がはるか高みに見えている。「遠いなあ。」しかし天気は最高。ワカンの効きも申し分ない。アラクラへの最後の急斜面を登り切ると、そこには大雪原が展開した。期せずして「ええとこやなー」の声が上がる。蕎麦粒から小ソムギ、五蛇池の稜線が目を引き付ける。蕎麦粒はさすがに別格の立派な山容だ。あまりにいい所なので、「ここでメシにして、空身で往復しよか。」との意見に、思わずうなずいたが風が強く、避けられる陰もない。「山頂近くまで行って風除けを探しましょか。」とそのまま前進を続けた。


 時間は昼近く、気温もかなり上がっているはずだが、強風の為か雪面は半クラスト状態。南東斜面には雪庇が崩落した後のデブリが堆積していたが、豪快な雪庇の名残がへばりついている。黒津山頂上に向けてはまさに雪稜漫歩。こんなに気持ちのいいことが他にあるだろうか。なかなか風をよけられる場所がなく、五蛇池からの尾根を合わせて最後の急登にかかる。空が近づいてきた。もうこれより高いところはない。「黒津」と書かれた標識が足元の木に掛かっている。北側の展望が一気に開け、能郷白山を中心に越美国境の山々が大きく広がった。先週の雷倉も近い。360度、山また山。  奥美濃のどこに惹かれるかと聞かれても言葉ではうまく言い表せないが、一度でも 雪の奥美濃に登った人なら説明不要だろう。


 それにしても風が強い。とても腰を落ち着けられる状態ではないので、稜線直下の 風下側斜面を削って4人分のスペースを確保。ここはまったく無風で天国のようだ。各自思い思いの昼食準備。指名により乾杯の音頭を取らせていただく。なんというビールの美味さ。クラブ黒津の雪のボックスは女っ気はないが、最上の時を過ごすことができる。これを至福と言わずして、なんと表現すればいいのだろう。名残り惜しいが下らねばならない。天狗山へと続く稜線が実に魅力的で、頑張れば届きそうな感じだが、今日はもうこれで十分だ。素晴らしい雪稜を再び噛みしめるように味わいながら、もと来たトレースを下って 行った。


 強風帯を抜けると雪が腐り始め、朝とは打って変わってグズグズのベタ雪ラッセル となった。緑水さんは自慢のソリで緩い斜面でも軽快に滑っていく。我々も尻セードを試みるが、急斜面では雪ごとなだれ落ちる感じ。さかさまになって木に引っかかって止まる 危うい場面もあった。今日は珍しく明るいうちに下山。村役場の真ん前の丁字山が微笑んでくれているようだった。この素晴らしい一日を我々に与えてくれた奥美濃の山に感謝。
みなさん、お疲れさまでした。                   山日和


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